WEEKLY (THINK)

peelの週報。
スタッフの日常×クリエイティブシンキング

ILLUSTRATED BYFarubi

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君を想う

 

1回目の緊急事態宣言が出た頃、彼女は入社してきた。

 

例に漏れずうちの会社もリモートワークに移行しはじめていて、
チャットでの入社挨拶となった。
丁寧な挨拶コメントと、はにかむ彼女の写真がアップされた。
いい感じに熟し始めているうちの会社には珍しく、まぶしいくらいにフレッシュ。
谷四のすみっこにさわやかな風が吹いた。

 

歓迎会もできなかったけれど、
宣言が解除されオフィスで一緒に働けた少しの間、
みんなでわいわいランチを食べに行ったり、
一緒にコンビニに新作アイスを買いに行ったり、
パーテーション越しにおやつ交換をしたりした。
親子ほどの歳の差にビビるコミュ力0の私とも、彼女はちゃんと同僚でいてくれた。

 

だけどそのうちフルリモートになって、オフィスは郊外に引っ越して。
そんななかで出社組となった彼女のことが、老婆心ながらずっと心配だった。
同世代はひとりもいないし、そもそもオフィスに人が少ない。
そんな環境で、胸が高鳴るような経験ができるだろうか。
今の若くていい時期が、無駄になりはしないだろうか。

 

なんて思いをよそに、相変わらず彼女は能動的にどんどんスキルアップし、

いつも新しいものを見せてくれた。
なんでもカテゴライズしがちな私の熟成した脳みそを溶かしてくれた。
おいしいアイスもチャットで教えてくれた。
なーんだ、私の心配なんて彼女の風の前では塵だった。

 

その凛として柔らかい風は今、充分な力を蓄えて次の場所へ進もうとしている。
最後もやっぱりリモートで退社の挨拶をしてくれた彼女。
「今が無茶できる最後かと思って」と言っていた。
どうか存分に無茶してほしい。

 

あなたが大きく自由に吹き渡ることを、
みんな切に願っている。

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WRITTEN BY Farubi

デザイナーです。イラストを描くことと地方のスーパーが好きです。

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