2024.03.25 108 views
コロッケの唄
「コロッケの唄」というのがあるらしい。雑誌「あまから手帖」の町田康さんのエッセイで知った。試しに動画サイトで検索し、聞いてみた。コロッケに思い出を仮託して懐かしみ、「毎日コロッケばかりたべてしまうなぁ」という感じの歌詞で、ほのぼのとした昭和歌謡だった。
コロッケが格別好きかと言われるとそうでも無い。嫌いではないし、美味しいとも思う。
子供の頃は大好きだった。商店街のお肉屋さんの店頭で揚げているコロッケは、滅多に買ってもらうタイミングが無かったが、買って貰えた時は何か特別な味がした。
そもそも、親と一緒に商店街へ買い物に行くことが稀だった。母親が食材の買い物をしている記憶はあまり無い。主な食材は「生協」に届けてもらっていた様に思う。それが一般的な事なのか、子供であった私にはわからなかった。今でも分からない。
いつごろからコロッケがそれほど好きでは無くなったのか定かではない。天神橋筋商店街で売っているコロッケが美味しいらしい、と聞くとまあ食べてみたい気もする。が、並んでまで買おうとは思わない。その程度の興味しかない。
今住んでいる家の近所にあるシャッター商店街に一軒だけ肉屋さんが残っていて、そこのコロッケをたまに買ったりしていた。子供の頃に食べた味に近い気がした。素朴だが、スーパーやお惣菜屋さんでは出せない、「肉屋さんにだけ出せる味」だった。その肉屋さんも最近ついに閉店してしまった。確かに「コロッケの唄」の歌詞の様に僕たちがコロッケを食べる時にはある種の「郷愁」みたいなものも一緒に食べているのかもしれない、という気がした。まあ、気のせいか。
WRITTEN BY citrus002
入社○十年のアートディレクター。マックス・ビル、オトル・アイヒャー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン、エミール・ルーダー、アルミン・ホフマン、カール・ゲルストナー、リヒャルト・パウル・ローゼ、マックス・フーバーが私のアイドルです。