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花のない暮らしの中で
わが家の庭には花がない。栽培という行為に強く気持ちが動かない。そんなことだから、義母が残した季節の花々をことごとく枯らしてしまった。唯一、スプレケリアの赤い花が何年かごとに開花する。水やりも、追肥も、植え替えも、なにもしないのに。健気さにほだされて手入れをしそうになるけれど、それが逆にマイナスに働きそうで怖い。だから、あえて放置している。
部屋に飾る花も自分では買わない。一片ずつ落ちて寂しくなっていく花との、別れどきがわからない。この花はまだ完全には絶えていないのだと思うと、捨てることにためらいが。カップ酒の空き瓶をフラワーベースに、褪せた花を飾った部屋。これがまた、なんとも怪しい景色で。そんなことで、花は能動的に買わないようにしている。
それぐらい花とは縁遠いのに、1年に1度、ある人に花を贈り続けている。これまでは生花の大手通信配達を利用していたけれど、13回目の節目を迎えることもあり、花屋さんに直接オーダーしてみることにした。お願いしたのは、幸せのオルオル花店さん。サイトにあるオーダーシートを使い、マークシート方式でポチポチと質問に答えていく。そして「ご希望がございましたら具体的にお知らせください。」の欄に辿り着く。自分の言葉で「どうしてほしいか」を伝えなくてはならない。説明しすぎると発想の間口を狭めてしまい、その仕上がりに驚きがなくなる。かといって曖昧にしすぎると、思いが逸れる可能性がある。何を語り、何を語らざるべきか…。
迷った末に、希望ではなく花を贈る背景を記した。
「病で逝去されて10年以上になります。40代でお亡くなりなった故人様は男性で、お花のお受け取りはご高齢のお母様になります」
行間にある思いの具現化は、花屋さんに委ねよう。
数日後、「お届けしておきました」のメールとともに送られてきたのがこの画像。選んだ花についての添え書きもあった。

イメージを超えた仕上がりに、ありがたさと感動が私の中で満ちていく。人をやさしく力づけるようなアレンジメントで。笑顔の思い出が見えて、温かさがあって。フラワーデザインとは、なんと心に美しい仕事なのだろうか。想像と創造を広げながら、1枚のオーダーシートに潜ませた思いをここまで豊かに読み解いてくれるとは。
そんなふうに沁みながらも、花のある暮らしにはまだ遠く。スプレケリアの鉢を見ながら、咲くか咲かぬかの見張りだけで今日を過ごしている。
WRITTEN BY kAwAucHi
タバコは3歳でやめました。文章を書いたり、企画を考えたり、進行管理をしたり。職種がふらついています。