2023.09.11 152 views
図鑑、好奇心、本を読むこと
「図鑑デザイン全史」という本がある。プロダクト、建築、グラフィックデザインを網羅していて、見ているだけで楽しい。
私が学生の頃はこの様に纏まった本は無かったように思う。バウハウスならバウハウスを紹介している本、作家に焦点を当て自伝的に紹介する本、といったものが主流だった。日本語で読める本も少なく、日本語で読めても、なぜか難解な日本語で書かれているもモノが多かった。
先日「雑誌が好き」という事を書いている人がいて、理由は「どこから読んでもよく、全部読まなくても良いから」とあり、なるほどと思った。図鑑も「頭から最後までしっかり読まなくてもいいよ」というスタンスで作られているところに好感が持てる。
ネットが身近になる前は常に何か本を読んでいたが、最近はあまり読まない。本を買うが読まない、読めない。
買ったままの小説や解説書は「早く読んで」と無言の圧をかけてくる感じがある。「いやー、すまぬ、すまぬ」とそれらの本を見る度に思う。
最近は、調べたいことはまずネットで検索するのが当たり前になった。ネットでは芋蔓式に検索が横滑りし、時間が過ぎる。何となく知りたい気持ちが満足してしまい本には手が出なくなる。
数年前から通っている中古レコード店がある。そこの店主が最近、店の移転をきっかけにSNSを始めた。寡黙で人嫌いな感じのする店主という印象だったが、SNSの中では愛想が良く仕事熱心な感じがして驚いた。勝手ながら、そういった面をあまり知りたくなかった気がした。知らない方がミステリアスな魅力があった。
好奇心というのは分別がなく「とにかく知りたい」と掘り進めていく。それで満足するかというと際限がない。「知らなくてもいいこと」が事前に分かればいいのだけれど、まあ難しい。そんなことを、ぼんやり図鑑を見ながら考えた。
WRITTEN BY citrus002
入社○十年のアートディレクター。マックス・ビル、オトル・アイヒャー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン、エミール・ルーダー、アルミン・ホフマン、カール・ゲルストナー、リヒャルト・パウル・ローゼ、マックス・フーバーが私のアイドルです。