2024.01.08 150 views
写真を撮るならこんな風に
数年前の成人式は、いまだに夢で見るくらい衝撃的なものだった。
前日、美容室に出向き簡単に髪をセット。翌日は朝5時に起床。日も昇ってない寒空の下、再び美容室に向かい着付けとメイクと本格的なヘアセットを行う。
慣れない早起きで眠気が取れないうえ、ギチギチに固定された帯は解けないので想像以上に体力を持っていかれる。疲労で区長のスピーチはほとんど覚えていない。申し訳ない。
式が終わって外に出れば会場備え付けの駐車場がオープンカーなどのド派手な車で埋まっており、中から先輩や保護者の方々が降りてくる。見たことないサイズの花束が次々と同級生に渡されていく。かぐわしい花の匂いでむせるくらいだった。
あとなぜか全員シャンパンとビールの瓶を持っていた。成人式をリーグ優勝か何かと勘違いしているようだ。
騒がしいのが苦手なのでそそくさと退散した私は、区民ホールから徒歩2分の自宅へと向かった。
出迎えてくれた両親と弟は、振袖に身を包んだ私を見て「オー」と歓声を上げる。面と向かって「大きくなったね」と言われた時は、振袖を着て良かったなと思った。
その声を聞きつけたのか隣に住む田中さんが家から出てきた。幼少期からここに住んでいるので、両親ともに旧知の仲である。
おめでとう、ありがとうございますと会話を交わす中、田中さんが「せっかくだし写真でも撮ったら!? スマホ貸して!」と提案してくれた。
私も両親も写真が苦手なため普段は避けているのだが、せっかくだしお願いしようと私はスマホを取り出す。
「「いや、結構です。」」
両親とも即答していた。そんなことってあるんだ。
そのあと20歳はじめての駄々をこねてなんとか撮ってもらったが、いまだにあの出来事は夢に見る。断るなよ。
WRITTEN BY たていし
コーダー兼デザイナー。まだまだ勉強中です。販売終了した期間限定商品のことをふと思い出しては、もう一度食べたいとしょんぼりしています。